北の海で育った「ミズダコ」
日本海、津軽海峡、太平洋で水揚げされる「ミズダコ」。タコの中では世界最大級の大きさで、体長5メートル、重さ30キログラムにのぼるものもあります。肉質は柔らかく水分を含み、甘みがあるのが特徴です。
青森県ではオスのタコは「ミズダコ」、メスのタコは「マダコ」と呼ばれています。
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ミズダコの漁法は、主に「樽流し漁」、「タコかご漁」、「タコ箱漁」
下北半島の東部、東通村にある野牛漁業協同組合を訪ねると、漁港には漁を終えた船が次々に到着しています。
「ミズダコは、7月~10月の禁漁期を除いて通年水揚げしています。漁法は、主に「樽流し漁」、「タコかご漁」、「タコ箱漁」の3種類ですが、漁師さんたちはそれぞれ工夫を凝らしながら漁を行っています」と、同漁協総務課長の蛯子みのりさんは語ります。
「樽流し漁」は、樽型の浮きと、熊手のような形をした針・いさりをつなぎ、潮の流れを利用して獲る漁法です。水深に合わせて糸の長さを調節しながら、いさりを海底に沈めます。ミズダコは、自分の縄張りに侵入してきた相手に飛びつく性質があるため、タコがいさりにかかると浮きがグッと沈みます。それを合図に、仕掛けを引き揚げるというわけです。
「樽流し漁は、漁場と潮の流れを見ながら、それに合わせて仕掛けを流す必要があるため、漁師さんの経験と技術が問われる漁法です」と、蛯子さんは語ります。
「タコかご漁」は、かごの中に杉の葉とタコのえさとなる魚類を入れてタコをおびき寄せて獲る漁法です。また、「タコ箱漁」は、タコが暗いところを好む習性を利用し、タコが集まるポイントにタコ箱を沈めて漁獲します。
「タコかご漁」で漁を行っている漁師の三國孝司さんは、「かごにタコが入るかどうかは、漁師の勘と経験、あとは運次第ですね」と、話します。
地まきのほたてを食べて育ったプレミアムなミズダコ
東通村は、特産品の「大型外海地まきほたて」の水揚げでも知られています。同漁協では、東通村沖の津軽海峡の漁場にほたての稚貝を放流し、およそ3年かけて自然な状態で育てています。
「潮の流れの速い津軽海峡で育った地まきほたては、いわゆる養殖とは違い身が筋肉質です。貝の大きさも非常に大きく、貝柱もしまり優しい甘味が特徴。また、海底が砂地のため付着物が少なく、貝殻もきれいなんですよ」。そう言って、蛯子さんが「大型外海地まきほたて」の貝を見せてくれました。
「ミズダコは、地まきほたての漁場にいることが多く、ミズダコを水揚げすると、よくほたてを抱いています。ほたてをえさにして育つので、この地域のミズダコは格別甘くておいしいと言われているんですよ」と、三國さんは語ります。
タコしゃぶ、アヒージョ、さまざまなメニューが楽しめる
荷捌き場に伺うと、同漁協の對馬幸信さんが、たった今、揚がったばかりのミズダコを見せてくれました。「このサイズで約20キログラム。このあと、競りが行われ、生きたまま出荷されます」。
漁協のスタッフや漁師の方々によると、「ミズダコは、お刺身以外にもさまざまなおいしい食べ方がある」と、いいます。
イチオシは、「タコしゃぶ」。皮をはいで、薄くスライスしたミズダコをさっと鍋のお湯にくぐらせて、ポン酢でシンプルにいただくのがおすすめ。ミズダコを薄く均一に切るコツは、一度冷凍したミズダコの脚を半解凍した状態でカットすること。こうすることで、きれいに包丁が入るといいます。
また、薄くスライスしたミズダコの脚を、油をひかないフライパンでさっといためて塩こしょうをして食べてもおいしいといいます。
「タコの味噌貝焼き」は、煮干しでだしをとった味噌仕立ての汁に、皮付きのミズダコ、豆腐、ネギなどを入れて卵でとじたもの。家庭によって、具は多種多様で、さらに卵でとじずにシンプルな味噌仕立てでいただくこともありますが、皮から良いだしがでるので、皮付きのまま料理するのは必須だといいます。また、和食だけではなく、アヒージョなど洋風メニューにも合うといいます。
そのほか、地元では、ミズダコの頭に入っている内臓を全て使って作る「タコの道具汁」などの漁師メシもあります。
「昔から『タコは捨てるところがない』と言われるほど、地元では身をまるごと使ってさまざまな料理にして食べてきました。ぜひ、多くの方に味わってほしいですね」と、蛯子さんは語ってくれました。
ミズダコを購入できる場所
マエダ プチマート東通店 |
青森県下北郡東通村砂子又里1 |
0175-33-2131 |
マエダ プチマート東通店 |
今回お話を伺ったのは
野牛漁業協同組合
総務課長 蛯子 みのりさん
青森県下北郡東通村大字野牛字釜ノ平251
0175-27-2151
野牛漁業協同組合
對馬 幸信さん
漁師
三國 孝司さん
(2024年3月)