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産地レポート 〜 生産者の声 〜

鬼神社とにんにく(弘前市)

写真


福地ホワイト6片

古くからニンニクは、解熱、胃腸薬など様々に薬用として用いられてきた。
薬用として食べられてきたニンニクが、食生活の変化に伴って食材として食べられるようになったのは1950年代。それ以後、ニンニクの生産が本格的に始まった。 薬用として利用されていた時代には、各地でそれぞれに、自家用に作付けされた在来種があった。青森には、苫米地在来種(後に福地ホワイトと命名)、岩木在来種(旧岩木町 現弘前市)があった。
※系統選抜の結果、青森の主力品種は甘みのある、真っ白なニンニク「福地ホワイト6片」に決定。
青森県でも、農業試験場研究員と生産農家の熱意により、ニンニクの作付けは、年々伸び、昭和47年には生産量が日本一となった。


岩木在来種

ちなみに、最も有力な対抗馬だった岩木在来種には、赤い色が入っていたため、見た目が劣ると選抜から漏れた。(農業と共に36年 南部畑作地帯のやさい 工藤 昭著)

その後「幻のニンニク」になってしまった岩木在来種はどうなっているのだろうか? 収穫に追われていた6月下旬、栽培者の一人、成田 トモ子さんを訪ねた。
成田さんが住む弘前市兼平は、岩木在来種が元々栽培されていた地域。地元の人は岩木在来種の事を「兼平種」と呼んでいる。
今では、岩木在来種を販売しているのは成田さんのほか2人だけになったという。 栽培面積も広くなく、畝数にして10畝ほど。
福地ホワイト6片も栽培しているので、交雑が進んでいるようだ。 キリッとした辛みと強い香りが、ニンニク好きの人に人気がある。

毎年、旧5月29日には、地元鬼神神社の大祭があり、今年は、6月23日(金)。
前の日の22日の宵宮に、ニンニクの市が立つ。「にんにく」は鬼の好物だそうで、感謝の気持ちをこめて好物のにんにくをそなえる習慣がある。
昨年は、7月20日だったが、今年は、旧暦の周りが早く、神社の祭りが早い。そのため、ニンニクのサイズは、例年より小ぶりだという。「もう少し、成長させたいが、例年鬼神社の祭りには必ず出すことにしているので、少し早いがしょうがない。」と成田さん。他の生産者もやはり、神社の祭りに出すことを目的としている。
成田さん達は、掘り起こして、10本づつほど束にし、2~3日陰干しする。
掘り起こした時には、福地種と見分けがつかないが、干すと赤い色が出てくる。
販売するときは、茎を切らずにこのまま販売する。お客さんは、これを魔よけのため、軒先に吊るすのだそうだ。

6月22日(木)旧暦5月28日 宵宮当日。

鬼神社 鬼神社拝殿
鬼のノが無い ニンニクを奉納
農機具を奉納  

弘前市鬼沢菖蒲沢地区にある「鬼神社」。
おにがみさま・おにじんじゃとも称する。ここには、村人のために、農業用水路を作った鬼が祀られている。
参道入口に立つ赤い大鳥居。扁額の「鬼」の「ノ」の角がない。
角のない優しい鬼として、村人に慕われ、住人は今でも節分の日に豆をまかない・端午の節句にヨモギや菖蒲を屋根にのせないことを習慣にしているという。
本殿の軒下には、氏子が収めた鎌や鍬が飾られている。鬼が使ったという本物の宝物は、本殿の奥に飾られているということだが、誰も見たことがないという。

ここには、赤穂藩主から送られた扁額がある。
伝承によると、津軽のニンニクが、脳溢血やその後遺症である運動麻痺にもよく効くととの言われがあり、赤穂藩主の病気の際、家来が、津軽藩ゆかりの者からこのニンニクを譲り受け食させたところ、見事に回復したという。喜んだ藩主は津軽藩九代藩主寧親公にそのお礼として、扁額を送ったという。

中央:藤田湖一さん
右:藤田光男さん
  赤穂藩主から送られた扁額
当時は、もっときらびやかな額だったらしいと、氏子総代の藤田湖一さん。

不思議なことに、大手香辛料メーカー のエスビー食品ののぼりが立っている。
聞けば、「ガーリックパウダー」(1960年発売)の商品化を行ったエスビー食品が1984(昭和59)年7月、同神社に分社を依頼、同神社との交流が始まったという。ニンニクを縁とし、今も続く東北の農村地域と食品メーカーとの深いつながりが感じられる。
ヱスビー食品ののぼり  

青森県にある在来品種が見直され、残していこうと「青森県在来作物研究会」が近年立ち上げられた。

青森県在来作物研究会 
種苗交換会
若い農業者が多い 種を持ち寄り交換
彼らは、貴重な遺伝資源を次世代に広げる事を目的とし、有機農法の実践にも取り組んでいる。固定種・原種は、もともと有機農法で栽培されていたものだ。

一方、生産性の悪い在来種にこだわることに首をかしげる人たちもいる。商品価値が無いから淘汰されていったのだから、何も今更、残す必要が無いのではという考え。確かにF1品種は、見栄えが良く、形も色も工業製品のように統一しているため売りやすい。こうした品種改良のメリットは計り知れないのだが、農産物の種類や、食文化の多様性がなくなる。
在来品種には、その土地ならでは、固有の生態系があり、古来のライフスタイルがある。
ある土地に根を張った植物は、その土地に合った子(タネ)を生むから、自家採種を繰り返すことで、身土不二の食べ物になる。

津軽の郷土料理 田子町料理 郷土料理つつけ(そばかっけ)
田子町料理

岩木在来が残ったのは、この神社があったからなのではないか。
鬼は、今でも村人たちを守っているのかもしれない。

農耕の神様鬼神社 神社狛犬


※系統選抜とは
新品種候補を試験栽培して、食味・収量・品質を調べること。




掲載日 2017.7.1


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