マーケティング情報


消費地レポート 静岡大学農学部准教授 松本 和浩 氏

第106回

静岡大学農学部准教授 松本 和浩 氏

写真

【松本 和浩 氏 プロフィール】

1977年静岡県生まれ。2016年10月より静岡大学農学部准教授。
鳥取大学農学部出身。大学ではニホンナシの台木の研究を行い、途中イスラエルで砂漠におけるくだもの栽培の研究も行う。博士(農学)の学位取得後、韓国国立忠南大学校で1年半の研究員生活も経験。2008年4月~2016年9月まで弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育研究センター助教。果肉の赤いリンゴ「紅の夢」など、リンゴ新品種の育成や栽培研究に従事。消費者と生産者を繋ぎ、よい園芸生産物でみんなが幸せになれる社会の形成を目指している。


 8年半お世話になった弘前大学農学生命科学部を退職して半年、平成28年10月より静岡大学農学部で働き始めています。静岡は故郷とはいっても、高校卒業以来20年の私の知らない歳月が流れており、その間にずいぶんと環境が変わっています。中山間地域は都市部が近いだけあり、人口流出が著しく、過疎化が進行しています。一方、若者はその都市部からも東京、名古屋等のさらに大都市に移動するため、人口減少が進み、若者をどう地元留まらせるか、ということも大きな課題となっています。ただ、これらの課題に対する住民たちの意識は高く、県内各地で様々な取り組みが行われています。本稿ではそれらの取り組みの一部を紹介し、青森の皆さんにも「郷土の活性化」の参考にしていただきたいと思い筆を執ります。
 私の静岡大における仕事の第1は実践的な農業ビジネスを行う社会人教育を大学院で行うことです。これは、弘前大における「紅の夢」などのリンゴの事業で培った産学官連携のノウハウを生かし、大学と地域社会の窓口となることが求められています。もう一つは、学部教育で、私は農食コミュニティデザインコースという文理融合型のコースに所属し、専門の園芸学、栽培学の立場から、コースの、哲学、社会学、福祉学、農業経済学等を専門とする他の教員と協力し、地域コミュニティーを活性化できる人材の育成を行っています。おのずから地域社会に出て、そこで活動されている皆さんと触れ合う機会が多くあります。今回はそのような中から2つの中山間地活性化の事例を紹介したいと思います。


(1)静岡市葵区大沢集落で行われている「縁側カフェ」


 静岡市の市街地から車で1時間ほど北にある標高340、戸数23戸の山間の小さな集落で、毎月第2、第4日曜日に「縁側カフェ」が開かれています。多くがお茶農家営むことから、自家製の緑茶と手作りのお茶菓子やお漬物などのお茶請けをいただくことができます。費用は各家300円。縁側に腰かけてお家の歴史や日々起こるたわいのない話を伺い、また、外部から訪ねて来る人同士でも会話の輪が広がっていきます。手作りのこんにゃくや生姜の煮物、ゆずのマーマレードなどの作り方のコツを教えてもらいながら、在来種という、品種では無い種子から育ち、各家庭に代々受け継がれてきた、その家庭にしかない味のお茶をいただくひと時は、時間の流れがゆっくりとなったような、ほっこりとした空間でした。

 


(2)大井川鐡道抜里(ぬくり)駅の「サヨばあちゃんの休憩所」

 島田市の市街地から電車や車で1時間ほど北の山間にある小さな駅、抜里駅。機関車トーマスやレトロ電車の運行で知られるローカル鉄道の小さな無人駅です。その駅舎の管理の傍ら、休日に小さなカフェを経営しているのが「サヨばあちゃん」。ランチ時には手作りの郷土料理等が大皿に並び、おばあちゃんに会いに来た外部の人から、地域のおじいちゃんまでいろいろな人が銘々につまみます。バイキングというよりは仲の良い親戚の集まりといった雰囲気。わずか500円でお腹も心もたっぷり満たされます。新茶の季節にはお茶摘み体験もでき、地域のお茶工場も見学できるそう。家庭菜園でできたサトイモやお漬物もお土産でいただき、抜里の良さを知ることができた日曜日でした。

-

 どちらの取り組みも田舎、郷土の良さを生かして、その良さをどうやったら外部の人に伝えることができるのかということがコンセプトになった取り組みだといえます。「物を売らなければならない」とき、その「物」のみを抽出して外部に発信するのではなく、「物」ができるその土地や、そこにあるストーリーも含めて「こと」として空間も含めてアピールしていく…。そのような、その場所に人を呼び込む仕掛け、良いところがいっぱいある自分の「ホーム」を地域の外の人にも紹介する仕掛けは、豊富な自然や独自の文化や伝統を有する農村だからこそできることなのかもしれません。
 青森県、豊かな自然や農産物、様々な伝統工芸品に独自の祭り等など、地域の外にアピールする「もの」には事欠きません。そのような「もの」を核に、地域の外の青森ファンを取り込んで、どう「こと」にしていくのか?地域の住民と、地域の外の人々がどう「共同空間」を作り、その中で良いもの「も」売っていくのか?提供する側、提供される側という、それぞれの一方的な関係ではなく、両者が一緒になって場を形作っていくというちょっとした視点や気持ちの持ち方の違いが、青森の良さをもっともっと際立たせる方策になると信じています。




情報掲載:2017年4月15日



バナーこのサイトはリンクフリーです
お問い合わせ先:青森県農林水産部総合販売戦略課
〒030-8570青森市長島1丁目1番1号  E-mail hanbai@pref.aomori.lg.jp
TEL:017-722-1111(代表:内線3108)/ 017-734-9571(直通)
Copyright 2005-2015 青森県農林水産部総合販売戦略課 All Rights Reserved.